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超雑多感想所。お暇なときにでもお立ち寄り下さい♪ 感想はネタバレしています。まだ読んでいない、プレイしていない方はご注意を!
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守り人シリーズ、第4巻。


隣国サンガルの新王即位儀礼に招かれた新ヨゴ皇国皇太子チャグムと星読博士シュガは、〈ナユーグル・ライタの目〉と呼ばれる不思議な少女と出会った。海底の民に魂を奪われ、生贄になる運命のその少女の背後には、とてつもない陰謀が―。海の王国を舞台に、漂海民や国政を操る女たちが織り成す壮大なドラマ。シリーズを大河物語へと導くきっかけとなった第4弾、ついに文庫化!


裏表紙より引用


守り人シリーズから少し逸脱した外伝的物語でありながら世界観はそのままに作品のおもしろさも保たれ、そしてココから守り人シリーズを全10巻の巨大な物語へと変化させたきっかけとなる、旅人シリーズ、第1巻。(一応旅人シリーズですが、守り人シリーズと合わせると第4巻)



虚空の旅人をはじめて読んだとき、何故バルサが登場しないのかと少しばかり気落ちしたことを覚えている。「守り人」ではなく「旅人」と書かれているのだから気付いても良いものだが。やはりバルサという人物が私の中で深く根付いていたと思う。文庫化となり、久しぶりに読み返すがはじめて読んだかのように新鮮に読み直すことが出来た。


狭い王宮の中に閉じこめられたあのチビ(チャグム)を明るく強い日差しのもとへチャグムを出してあげたくてという気持ちから(あとがきより)生まれたこの物語は、チャグムをサンガルという南の大国へと誘う。勿論、〈新王即位ノ儀〉という正式な使者として。そこで初めて知る王族の兄弟の絆の厚さと、陽気でおおらかな国の意外と脆いと脆い弱点。兄弟同士で争わなくても良いことを初めて知るチャグムが心の内はいかほどか。


それにしてもチャグムは14歳という年齢にして、もの凄くしっかりと成長している。思慮深く、感情のうねりをコントロールできる。けれども胸の内は熱く激しい。1巻から比べると格段と成長したチャグムの姿に安心して読むことが出来た。


皇太子の重圧と戦いつつ変わった自分を大切に成長していくチャグムの描写が良い。最後まで読み切った後なのでチャグムがどんな成長を遂げるかわかっているものの、苦悩の中にあっても心情や行動でその芯の強さが伝わってくる姿に惹かれる。


そして様々な思惑が錯綜するサンガルにて出会う王子・タルサン、王女・サルーナ。サンガル王国は血族の結束が固い。そして女性のしなやかな強さがこれでもか!と表現され、ヨゴ、カンバルとはまた違う国の有様がよくわかる。そんな彼らとチャグムにハラハラさせられながらもぐいぐいと引き寄せられる。


鮮やかに目に浮かぶような「海」の表現はまるで自身が海の傍にいるような気にさせる。守り人シリーズはファンタジーでありながら簡潔に表現され、彼らの苦悩や心情、行動の描写が豊かでリアル。息つかせぬ展開がスピーディーでページをめくる手を止められない。


最後にタルサンが告げた「薄布が嫌い」という言葉に返して心中で告げた「タルサン、自分も〈王子〉という名の薄布を被っていることに気付いているかい?」 という表現が耳に残る。ほんのわずかなセリフや仕草だけで、こちらの心をぐいとつかんでしまう不思議な高揚感。そして読了後に胸に広がる温かさ。読み進める内に彼らに一喜一憂し、応援したくなる、そんな素敵な物語でした。




【守り人シリーズ】その他の感想
第1巻 「精霊の守り人」
第2巻 「闇の守り人」
第3巻 「夢の守り人」



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髪結い伊三次シリーズ、第2巻。


材木商伊勢屋忠兵衛からの度重なる申し出に心揺れる、深川芸者のお文。一方、本業の髪結いの傍ら同心の小者を務める伊三次は、頻発する幼女殺しに忙殺さ れ、二人の心の隙間は広がってゆく・・・・・・。別れ、裏切り、友の死、そして仇討ち。世の中の道理では割り切れない人の痛みを描く人気シリーズ、波瀾の第二弾。


裏表紙より引用

 
1作目よりも急展開した髪結い伊左次シリーズ。捕物帖ですが、全体的に伊三次とお文の恋愛模様と伊三次と不破の信頼関係がメインになっている。


伊左次と文吉が別れた場面ではまたよりを戻すだろうと思いつつも、知らずページをめくる速度が上がる。伊左次は情に厚くいい男だけど、意外と頑固で短気。まあそこが良いんだろうけれど(笑) 特に、「菜の花の戦ぐ岸辺」において殺しの疑いをかけられた伊三次をお文が助ける話には胸が熱くなる。この話は本当に辛い。犯人を捕まえてお調べを受けるのだろうが、冤罪でこんなに傷つけられるとは・・・。


文吉とよりを戻したところで、不破との信頼関係がほつれて壊れる寸前に。その間に起こる「鳥瞰図(ちょうかんず)」では不破の妻であるいなみが事件を起こす。それを止めようと奔放する小者達が良い。初めは断る物の、渋々受け持った伊左次がほぼ事を収めたと言っても過言でない辺りが器用貧乏な彼らしい。


前巻でもいなみの過去について語られているが、仇討ちに関してはどうしてもわりきれない。勿論、仇討ちが良いとも悪いとも一概には言えないけれど、彼女が事を起こした後のことを思うとどうも・・・。しかし普段平静と笑みを浮かべているその裏で考えていることを思うと正直彼女は少し苦手。普段の彼女は朗らかで好きなのだが、時折苦手な人になる。この辺り、人物描写が上手いとしみじみと感じた。


そして最後の「摩利支天横丁の月」では、伊三次に救われた弥八と、お文の家の女中をしているおみつとの淡い恋物語が温かく明るい未来が見えたのが良かった。この時代小説は時代物だけれども現代に結びつく物があり、どの話も読み応えがあり、心に響くものがある。やばいなあ。このシリーズ、完全にはまった。




【髪結い伊三次シリーズ】その他感想
第1作 「髪結い伊三次捕物余話 幻の声」


[宇江佐真理]その他感想
深川にゃんにゃん横丁

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勾玉三部作、第2巻・下巻。


嬰(みどり)の勾玉の主・菅流(すがる)に助けられ、各地で勾玉を守っていた〈橘〉の一族から次々に勾玉を譲り受けた遠子は、ついに嬰(みどり)・生(き)・暗(くろ)・顕(しろ)の四つの勾玉を連ねた、なにものにも死をもたらすという〈玉の御統(みすまる)〉の主となった。だが、呪われた剣(つるぎ)を手にした小倶那と再会したとき、遠子の身に起こったことは・・・? ヤマトタケル伝説を下敷きに織り上げられた、壮大なファンタジー、いよいよ最高潮!


裏表紙より引用


4つの勾玉を探し、菅流と旅を続ける遠子。しかし菅流は勾玉が集まる度に人外化していくな(笑) また、七掬と再会し、大王の元へ勾玉を取りに行くシーンは何度読んでも面白い。勾玉を盗みに来たというのに堂々と居直る遠子は流石です(褒め言葉) 大王が遠子に惹かれた場面は何とも言えない気持ちになる。


そして、遠子と小倶那がそれぞれの立場で再会したシーンは鳥肌物。予想は付いていた物の、やはり小倶那は変わりおぞましい遠子の心の中に生きていた小倶那だった。小倶那から逃げ出した遠子と、刺されてなお遠子を思う小倶那が切なく、それでも繋がっている心の絆が胸に来る。そんな中で仲良くなっていく小倶那と菅流も微笑ましくてこのコンビも好きです。


一番好きな場面は小倶那の元から逃げ出した遠子(宮)を迎えにくる場面。不思議とそこだけを繰り返し読んでしまう。2人は完璧ではなく、悩んだり逃げたり流れに任せたりする。そんな人間臭さが良い。気持ちが通い合い、新しく始まる2人の物語が好きです。前半も好きですが、個人的には後半の方がぐっと物語が濃厚になって面白い。


親の愛は強く優しい物だけれども、小倶那母である百襲姫(ももそひめ)の子への執着は恐ろしく怖い。覚悟を決めた小倶那と受け入れた遠子の気持ちが以前読んだときよりもずっと理解できるようになったように思う。大人になって小倶那の親を思う気持ちが理解できるようになったせいかな、と。


そして空色勾玉でのあの勾玉が再登場し、帰ってきた小倶那の場面には思わず涙と共に自然と笑みがこぼれた。歓声を上げて駆け寄ってきた部下達と最後の菅流の言葉に思わずにやり。日高見に残った最後の勾玉は最後の3作目で登場かな? 空色勾玉は結構内容を覚えていたのですが、白鳥異伝と薄紅天女は完全に覚えていないだけに3作目を読むのがより楽しみ。




【勾玉三部作】感想
第1作 「空色勾玉」
第2作 「白鳥異伝 上」


【荻原規子】その他感想

【RDGシリーズ】感想
第1作 「RDG レッドデータガール はじめてのお使い」



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勾玉三部作、第2巻・上巻。


双子のように育った遠子(とおこ)と小倶那(おぐな)。だが小倶那は〈大蛇の剣〉の主となり、勾玉を守る遠子の郷(さと)を焼き滅ぼしてしまう。「小倶那はタケルじゃ。忌むべきものじゃ。剣が発動するかぎり、豊葦原(とよあしはら)のさだめはゆがみ続ける・・・」大巫女の託宣に、遠子がかためた決意とは・・・? ヤマトタケル伝説を下敷きに織り上げられた、壮大なファンタジーが幕を開ける! 日本のファンタジーの金字塔「勾玉三部作」第二巻。


裏表紙より引用


ヤマトタケル伝説を下敷きに幼馴染みのように育った遠子と小倶那を巻き込んだ朝廷の権力闘争の物語。1作目よりも神と人との関わりが薄くなった世界で繰り広げられる人と神の争い。久々に読みましたが、完全に物語を忘れていたので新鮮な気持ちで読み終えた。


利発で我慢強い小倶那と勝ち気で男勝りな遠子が可愛らしい。2人は強い心の絆で結ばれ、それが当然だと思っている辺りが微笑ましい。序盤で描かれる幼い「遠子」と「小倶那」が互いに側にいるだけで幸せと描かれている分、中盤からの展開には胸を締め付けられる。


他にも多くの魅力的な登場人物が登場する。日継の皇子・大碓(おおうす)、その従者・七掬(ななつか)、三野の橘の本家の姫・明姫(あかるひめ)、遠子とは犬猿の仲の象子(きさこ)、女たらしなんだけど憎めない菅流(すがる)。特に後者の2人が初めの印象とは異なり、遠子と親密になっていく様が面白い。


また、所々で描かれている空色勾玉の物語がいい。「狭也」と「稚羽矢」がかつて冒険した物語の軌跡が功績にこう語られているのかと思うと胸が熱くなる。


必ず帰ってくると約束した小倶那が村を焼き、小倶那を殺すと決意する遠子。男でも女でも子供でもなければ、巫女となるのか、タケルを打つ戦士となるのか遠子の動向が全く読めない。また、複雑な立場から動くことの出来なくなる小倶那は果たして何を思うのか。


いよいよこれからという船出の場面で一旦終劇。一度読み始めると止められない吸引力は流石。早く下巻を読まなければ。




【勾玉三部作】感想
第1作 「空色勾玉」


【荻原規子】その他感想

【RDGシリーズ】感想
第1作 「RDG レッドデータガール はじめてのお使い」



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守り人シリーズ、第3巻。


人の夢を糧とする異界の“花”に囚われ、人鬼と化したタンダ。女用心棒バルサは幼な馴染を救うため、命を賭ける。心の絆は“花”の魔力に打ち克てるのか? 開花の時を迎えた“花”は、その力を増していく。不可思議な歌で人の心をとろけさせる放浪の歌い手ユグノの正体は? そして、今明かされる大呪術師トロガイの秘められた過去とは? いよいよ緊迫度を増すシリーズ第3弾。


裏表紙より引用


久々に再読。1・2作目と比べると王宮の陰謀やバルサの活躍が小粒気味ですが、バルサとチャグムの久々の再会や、今度はタンダを助ける為に力を合わせる場面など読み進める内に胸が熱くなる。


物語のメインは人の夢を糧に生きる花とトロガイ師の過去。幻想的な風景と共に語られる夢の中は居心地が良く、過酷な現実や苦しみ、悲しみから逃げ出した人達は次々と捉えられ、その中の1人の甥っ子を助けようとしてタンダも捕まってしまう。


精神体でのチャグムとタンダの再会、そして現世でのチャグムとバルサの再会には胸が熱くなる。そして、タンダのために命をかけるバルサの思いの強さはいかほどか。


昼と夜の力を知り、その狭間に生きる呪術師の物語は息つかせぬリアリティある文章と表現力に、読めば読むほどぐいぐいと物語に引きずり込まれ、魅了される。やっぱりいいなあ、守り人シリーズ。児童書ですが、やはり大人にも読んで貰いたいシリーズです。




【守り人シリーズ】その他の感想
第1巻 「精霊の守り人」
第2巻 「闇の守り人」



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守り人シリーズ、第2巻。


女用心棒バルサは、25年ぶりに生まれ故郷に戻ってきた。おのれの人生のすべてを捨てて自分を守り育ててくれた、養父ジグロの汚名を晴らすために。短槍に刻まれた模様を頼りに、雪の峰々の底に広がる洞窟を抜けていく彼女を出迎えたのは―――。バルサの帰郷は、山国の底に潜んでいた闇を目覚めさせる。壮大なスケールで語られる魂の物語。読む者の心を深く揺さぶるシリーズ第2弾。


裏表紙より引用


守り人シリーズの中で多分一番読み返している一冊。ふとした瞬間にバルサの槍舞のシーンが浮かんで読み返したくなる。文庫になってから手に入れたので、常にとりだしやす位置にキープしてます。


精霊の守り人からの次作ですが、前作を読んでいなくても十二分に楽しめる。といってもこの本を読んだ方には是非とも精霊の守り人も読んで欲しいです。


主人公はバルサ。精霊の守り人の時に語った自らの過去との決着を着けるために舞い戻った故郷・カンバル。そこで思いがけず起こる事件、過去の因縁、そしてジグロの思い・・・。全てが重なり合うこの話は読んでいて胸が熱くなる。闇の守り人(ヒョウル)の登場する最後の場面では、バルサと共に泣いてしまった。


最後のあとがきにも書かれているが、精霊の守り人は子供に、闇の方は大人に指示されていると。それを読んだとき確かにと思ってしまった。かつて読んだときは闇の守り人はあまりピンとこず、精霊の守り人の方が好きだったからだ。本は年齢を重ねて読むとまた違った感想を抱ける。その感覚を味わえ、面白いと改めて感じた一冊。




【守り人シリーズ】その他の感想
第1巻 「精霊の守り人」



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愛しの座敷わらし、上巻。


食品メーカーに勤める一家の主・晃一の左遷から、田舎の古民家に引っ越した高橋家。夫の転勤に辟易する史子、友達のいない長女・梓美、過保護気味の長男・智也、同居の祖母は認知症かも知れず・・・しかもその家には、不思議なわらしが棲んでいた。笑えて泣ける、家族小説の決定版。


裏表紙より引用


初読み荻原浩さん。かなり読みやすく、少し読むつもりが読破してしまった。


高橋家は夫婦と中2、小4の子供2人に夫の祖母の5人家族。何処にでもいるような普通の家庭だが、父親の仕事の転勤から田舎暮らしをすることに。しかも引っ越した先がかなり老朽化した家で、その家には座敷わらしが住んでいた! 各人それぞれに悩みや不満を抱えながら生活しており、田舎暮らしの新生活にはまだまだ慣れず。


タイトルにもなっている座敷童ですが、上巻ではまだ認知症気味の祖母と小4の息子にだけ認知されていて、座敷童とのアレコレは下巻かな。くりっとしたちょっと人見知りな座敷童の可愛いこと!


各々の視点から語られるのでそれぞれがどんな風に相手を見ているかがわかりやすく、面白い。智也の牛に対する感想には思わず笑った。いや、そんなシーン見たらそう思うけどね(笑)


田舎の風景も緑が多く、空が青くていかにも気持ちよさそう。田舎に住めば人間的な部分を回復できる、と良いこと尽くめとはならず、やはり不便な事は多々有り。便利さを手放す代わりに手に入るものはきっとあるのかも、と前向きに考えている辺りが好感触。


最後にきりっと昔の頼りがいのある祖母になった辺りで思わずにやり。面白くなってきた! 今後、この家庭にどんな展開が待っているのか。下巻で座敷童がどう動くのか楽しみ。




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髪結い伊三次シリーズ、第1巻。


本業の髪結いの傍ら、町方同心のお手先をつとめる伊三次。芸者のお文に心を残しながら、今日も江戸の町を東奔西走・・・。伊三次とお文のしっとりとした交情、市井の人々の哀歓、法では裁けぬ浮世のしがらみ。目が離せない珠玉の五編を収録。選考委員満場一致でオール読物新人賞を受賞した渾身のデビュー作。

裏表紙より引用


宇江佐真理さんデビュー作。深川にゃんにゃん横町を読んでからデビュー作が面白いというAmazonのレビューを読み、いてもたってもいられず本屋に走ってしまった(笑)


主要人物は髪結いの「伊三次」、深川芸者の「お文」、北町奉行同心の「不破友之進」の三人。捕物帖で髪結いが主役ってかなり珍しい気がします。講成も伊三次だけでなく、お文、不破と三人それぞれの視点から語られるので物語に入り込みやすい。


伊三次は訳ありで、店を持たない「廻り髪結い兼下っぴき」という何とも微妙な立ち位置。酒は下戸で、甘いものにめっぽう弱い。逆に酒が強く、深川芸者で男勝りで伊三次の思い人である文吉ことお文。


2人は好きあい、何れは所帯を持ちたいと思っているが、伊三次が店を持っていないので一緒になれず。会えば思っていることと反対のことを言ってしまうお文は、現代で言うところのツンデレ(笑) この2人が不器用で、ハラハラドキドキさせられますが、何とも言えない恋模様がリアルで今後の展開が気になるところ。


また、同心の不破は奉公所でも1、2を争うくらい口が悪く、朝は妻のいなみに叩き起こされ、眠り猫なんてあだ名を付けられたりとかなり個性的。妻のいなみとの馴れ初めにはじんときました。優しい言葉は口に出さないけれど、懐が深い不破は魅力的で格好いい。この三人の人物描写が秀逸。


特に感じたのは、一つ一つの事件をただ「一件落着」、と終わらせないところ。全てが明るみに出るわけではなく、分からないところは分からないままの辺りがいい。また文章が簡潔で、江戸っ子らしい台詞が飛び交う辺りがまた良い。


人情深く、笑いあり、涙あり、切なさ有り。読み終えた後に残る「続きが読みたい!」という吸引力が半端ない。このシリーズ、はまりそうです。




[宇江佐真理]その他感想
深川にゃんにゃん横丁



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初読み、宇江佐真理さん。


お江戸深川にゃんにゃん横丁。長屋が並ぶこの場所は、その名のとおり近所の猫の通り道。白に黒いの、よもぎにまだら。愛らしい猫たちがあくびをしているその横で、雇われ大家の徳兵衛は、今日もかわらず大忙し。悲しい別れや戸惑いの出会い。報われない想いや子を見守る親の眼差し―――。どんなことが起ころうと、猫がニャンと鳴けば大丈夫。下町長屋の人情溢れる連作時代小説集。


裏表紙より引用


深川に必ず猫が1匹、2匹通る細い小路が舞台の「深川にゃんにゃん横町」。タイトルと裏表紙の内容に引かれて購入。しかし思ったより猫は登場せず(苦笑) 猫との絡みを期待すると少しがっくり来るかもしれません。


派手な事件はないけれど、人情味溢れる江戸をたっぷりと満喫。にゃんにゃん横町で生活する人達の人間関係は現代に生きる私には結構しんどい物があるけれど、家族以外で親戚同然に暮らしている姿は在りし日の日本の風景。


あくまでも「にゃんにゃん横町」で暮らす人々が主軸であり、猫は彼らに寄り添うだけ。でもこの絶妙な距離感が返ってリアルで個人的に好きでした。人は1人ではなく、周りの人の支えがあって生きていることを改めて実感した。「ま、人んちのことは他人がとやかく言うことではありやせんが」ということも心理だけれど(笑)


がつんと啖呵を切るおふよさんにほれぼれしつつ、明るい話も哀しい事件も乗り越えていくにゃんにゃん横町。人の温かさと猫のいる穏やかな雰囲気に癒されました。読み終えたときの何とも言えない切なさと暖かさがいい。ちょっとホッとしたいときに改めて読み直したい。




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ダン・サリエルシリーズ、第3巻。


傲岸不遜で傍若無人、唯我独尊を地でゆく――そんな俺様な性格のサリエルに、過去最大級のスランプが訪れていた。それは、サリエルの扱いになれているはずの契約精霊モモですら手に余る程の大・大・大スランプ。誰の言葉も耳に入らず、慰めも届かない。この荒れようは、普段はその才能を尊敬し彼に憧れているアマディアでさえ引くほどの酷さであった。果たしてこの事態の顛末は――!?
GAマガジンに掲載された『ダン・サリエルと女神の気まぐれ』ほか表題作『ダン・サリエルと真夜中のカルテット』等全4作品を収録した待望の第3弾が登場!



裏表紙より引用


今回は未曾有の大・大・大スランプに陥ったサリエル。いつもは傲慢不遜な彼がスランプで、いつもと違う自分を探そうとユーモラス溢れまくるイメチェンシーンには笑いました。あの挿絵は反則だろう(笑) しかし、そんな努力のかいも虚しく、段々と自信を失い最後には敬語を使い始めた辺りはもう・・・。


悩んで苦しんで、どうしようもないと感じるサリエルに、最後のモモの台詞がぐっと来ました。そしてそんなモモにサリエルはお礼を―――。やはりこの2人が良いです! 大好きだモモ&サリエル! また、復帰1発目の演奏での「・・・・・・・傲慢だったのだろうか?」には大いに笑った。もの凄く今更! 今更何を仰っているのですかサリエルさん(笑) 謙虚は無理ですよ、サリエルさん(笑)


そして、表題作「真夜中のカルテット」。アマディアの兄・カルネリが迎えに来る話。いやーもの凄く濃い! 濃厚! サリエルと張り合えるほどエキセントリックな人物。初登場時のモモ&サリエルのリアクションには笑った(笑) 彼の言うことは正論。けれど、音楽の道を諦めたくないアマディアが出した答えは・・・。自身の考えは甘えだと分かっていても、それでも引かないアマディアは本当に逞しくなった。


上がり症を克服しようと少しずつ努力を重ねたアマディアに、サリエルの秘策が功を奏して徐々に力を発揮し、最後たがが外れた瞬間はたまらない。胸が熱くなり、うるっときました。頑張ったよアマディア・・・! カルテットのシーンは今までの登場人物が揃い踏み。本当に音楽が聞こえてきそうなくらい活き活きと演奏し、楽しげな登場人物が大好きです。


3作目ですが、これにて一幕閉幕のこと。ポリフォニカシリーズの中でも1・2を争うくらいこのシリーズが大好きだっただけに残念ですが、いつかまた続巻が出ることを祈ります。あざの先生お疲れ様でした。




【ダン・サリエルシリーズ】その他の感想
第1作 「ダン・サリエルと白銀の虎」
第2作 「ダン・サリエルとイドラの魔術師」



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のんびりなので更新は遅いと思いますが、ちまちま書いていこうと思います。よろしくお願いします。

【追記】かなり更新空いてすみません。体調不良と多忙でブログを書く気力がorz またぼちぼち書いていくのでよろしくお願いします。
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