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超雑多感想所。お暇なときにでもお立ち寄り下さい♪ 感想はネタバレしています。まだ読んでいない、プレイしていない方はご注意を!
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大坂天満の寒天問屋の主・和助は、仇討ちで父を亡くした鶴之輔を銀二貫で救う。大火で焼失した天満宮再建のための大金だった。引きとられ松吉と改めた少年は、商人の厳しい躾と生活に耐えていく。料理人嘉平と愛娘真帆ら情深い人々に支えられ、松吉は新たな寒天作りを志すが、またもや大火が町を襲い、真帆は顔半面に火傷を負い姿を消す・・・・・・。


裏表紙より引用


高田郁さんの本は「みをつくし~」からはまって2011/06/04現在既刊分は全部読んでいたので、この銀二貫を読めば高田郁さんコンプリート。しかし、主人公が男性だったので読もうとするまでに時間がかかりました。高田郁さんの本は今まで読んできたのがすべて女性が主人公だったので。


閑話休題。


もう一つの短編集、『出世花』とは異なり、上方の寒天を商う商家が舞台の人情話。大阪天満宮に寄進するはずだった銀二貫で仇討ちを和助から買われ、命を救われた少年・鶴之輔改め松吉。恩を返すべく働くも、町を度々襲う火災が家を人を町を焼き尽くしていく。多くの災難に翻弄されながらも自身の足でしっかりと立って生きていく松吉と、周囲を取り巻く人々の温かい心がじんわりと胸にくる。


糸寒天を作り、練り羊羹を作ろう奔放する松吉と幼馴染・真帆との恋物語は長く険しいものの、最後に結ばれた様には目に涙が浮かぶ。初め出会ったときの話を最後に絡めたのもまたいい。そして、様々な困難を乗り越えついに念願の大阪天満宮に「銀二貫」を納めた場面は感無量。


タイトルにもなっている「銀二貫」。調べてみると、金に換算すると30両以上あり、米価から計算した金1両の価値は、江戸時代の各時期において差がみられ、おおよそ初期で10万円、中~後期で3~5万円、幕末頃には3~4千円とのこと。当時、食費はかなり安く、そば代16文(400円)くらいなので、商家、しかも寒天問屋が銀二貫も貯めると考えると、どれほど高価な金額かがわかる。(この値段は日本銀行金融研究所貨幣博物館より引用しています)


また、寒天問屋の主・和助や番頭・善次郎の商いの筋の通し方が粋。目前の利益よりも信頼やプライドを大切にし、利益のためだけではなく、目に見えない神仏感謝の気持を持つ心意気やお得意様への筋の通し方が読んでいて清々しい。今の経済では考えられない商いの仕方だが、かつての日本ではこの考え方が主流だったのだろうと考えると、感慨深い。


また、寒天に対する描写がリアルですごくたくさん調べたのだろうと思ったのだが解説を読んで納得。高田郁さんの本を書く姿勢に澪を感じた。ますます高田郁さんワールドに惚れ込みました。




[高田郁]その他感想
出世花


【みをつくし料理帖シリーズ】その他の感想
第1作 「みをつくし料理帖 (1) 八朔の雪」
第2作 「みをつくし料理帖 (2) 花散らしの雨」
第3作 「みをつくし料理帖 (3) 想い雲」
第4作 「みをつくし料理帖 (4) 今朝の春」
第5作 「みをつくし料理帖 (5) 小夜しぐれ」


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もののけ本所深川事件帖、第2巻。


江戸・本所深川で、献上品の売買を行う、献残屋の手代・周吉。彼は妖狐に憑かれたオサキモチ。もののけがとり憑いた献上品をせっせと磨いていると懐から “オサキ”が顔を出し、町を騒がせている放火魔の噂話を始めた。ある晩、預かり物の高級掛け軸が燃やされて、店は倒産の危機に。周吉とオサキは百両の賞金を目当てに“鰻の大食い合戦”への出場を決意するが・・・。妖怪時代劇第二弾、開幕!


裏表紙より引用


前巻より格段に読みやすく、分かりやすくなり世界観に入り込みやすかった。個人的な見所はオサキと周吉ののほほんとした会話。オサキのいたずらっこ的な感じと、意外と怖いことをさらっと言う周吉が好き。また、周吉の野暮っぽさとお琴とのアレコレはまだまだ目が離せない。


また、今巻は新たに稲荷神社の神様「おこん」と「ベニ様」が登場。未だに2人の立ち位置が分からず、この曖昧な辺りが「日本の神様」っぽくて面白い。また、ベニ様に憑かれた「お蝶」の背景が母親と料理屋を営み、経営が思わしくないとの件が「みをつくし料理帖」を彷彿とさせた。澪も最初は大変だったよな、と思わず(笑)


メインは賞金100両という「鰻大食い合戦」。奉公している献残屋の危機を救うために大会に出る周吉。各々のエピソードは結構面白かった。そして蜘蛛ノ介は良いキャラしてる。食べっぷりや剣の腕もそうですが、佐平次が侵した失敗を許す度量はすごい。ただ、水芸の天丸は予選で落ちてしまい決勝に華がなかったのは残念。


それと、気になるのはしげ女が周吉がオサキモチだと知っているのではないか、ということ。まだまだ蜘蛛ノ介も謎が多い。今後が気になるところ。


前巻よりまとまり、読みやすかったけれど、今ひとつ物足りない。前巻、個人的に解消して欲しかった部分もそのままだったので、よけいにそう思ってしまったのかも知れないけれど。登場人物達は個性的で面白いし、世界観も好き。楽しいんだけれど、もっと面白くなるのでは!と思ってしまう。続巻に期待。




【もののけ本所深川事件帖】その他の感想
第1作 「もののけ本所深川事件帖 オサキ江戸へ」



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もののけ本所深川事件帖、第1巻。


江戸・本所深川で、献上品の売買を行う、献残屋の手代として働く周吉。彼はオサキという妖狐に憑かれたオサキモチであり、いつも懐にいるオサキに、恋に仕事にと、やることなすことからかわれている。ある夜、辻斬りに襲われ、殺人も起きる中、店の一人娘・お琴がいなくなった。周吉はオサキモチの不思議な力を使い、お琴を捜しに夜の町へ出て行く。おとぼけ手代と妖狐一匹の妖怪時代劇。


裏表紙より引用


初読み、高橋由太さん。この作品がデビュー作だそうです。思っていた以上に読みやすく、サクサク読めた。ただ、「時代小説」だと思って読むと少し物足りないかも。


本屋でピックアップされ、以前から気になっていたもの。読んでいて彷彿したのは畠中恵さんの「しゃばけ」シリーズや「つくもがみ貸します」。大きな違いとしては、主人公である・周吉が特殊能力を持っていること。時間軸は田沼意次が活躍しているとのことで、時代背景は「剣客商売」辺りと近いかな。


設定や雰囲気、時代背景も良いし、周吉とオサキのちょっとずれつつも、ほんわかした雰囲気の会話は面白く、また周吉の性格は真面目で誠実かつちょっとヘタレ(笑)と好印象。そんな彼が手代として働く献残屋の娘・お琴との会話も良い味出てる。


ちなみに、「オサキモチ」とは、オサキという狐の姿をした憑きものに疲れた人間のことで、周吉は「オサキ」という狐に憑かれている。そのおかげ(せい?)で周吉には人並みならぬ特殊能力があり、その力を時々使いながら物事を解決していく。


他にも個性的な登場人物が登場する。例えば飄々としながら腕の立つ「柳生蜘蛛ノ介」。強面だけれども手先が器用で子供にも人気のある親分「佐平次」。


ただ、度々時系列が細切れに挿入されており、エピソードが飛び飛びになっているので、世界観にいまいちのめり込めなかった。物語や設定は好きだっただけにちょっと残念。また、最後はホラーチックになり新市の件が個人的に消化できず。その辺りを含め妖怪のことや、修平の掴めない性格がどう描かれてくのかが気になるところ。次巻に期待。




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時代小説「みをつくし料理帖シリーズ」、5作目。


季節が春から夏へと移ろい始める如月のある日。日本橋伊勢屋の美緒がつる家を訪れ、澪の顔を見るなり泣き始めた。美緒の話によると、伊勢屋の主・九兵衛が美緒に婿をとらせるために縁談を進めているというのだ。それは、美緒が恋心を寄せる医師、源斉との縁談ではないらしい。果たして、美緒の縁談の相手とは!? ――(第三話『小夜しぐれ』)。表題作の他、つる家の主・種市と亡き娘おつるの過去が明かされる『迷い蟹』、『夢宵桜』、『嘉祥』の全四話を収録。 恋の行方も大きな展開を見せる、書き下ろし大好評シリーズ第五弾!!


裏表紙より引用


待ちに待った最新作! 4巻を読んだその勢いで読み終えました。今巻は新しい事件が起こるというわけではないけれど、今後の伏線が詰まった巻だったように思います。


種市さんの過去「つる屋」の店の名前にもなっている「おつるさん」の過去に起こった話から始まり、吉原翁屋での宴席料理を作ることになり、そこでついに野江ちゃんこと「あさひ太夫」との刹那の再会、そして副題にもなっている「小夜しぐれ」での美緒の婚礼。どの話にも今後の伏線が見え隠れ。


種市さんの娘おつるさんの過去の話には胸に積もる物があった。敵を取ろうとする気持ちも分かるが、最後に敵である錦吾の息子と娘との姿を見つめた種市さんの心境はいかばかりか。思いとどまり、澪とふきちゃんと3人、つる屋に戻っていったのだろう姿がほろ苦い。


そして宴席料理での一幕。今は普通に店頭に並び、春の食材として気軽に買うことの出来る「菜の花」も江戸の当時は咲かせておけば、油となり小判に化けると食されないとは驚きました。といっても習慣がないのは江戸で、大阪では食べられていたようですが。その菜の花と宴席の最後に茶碗でほわりと芳香を匂わせる桜の塩漬け。春ですなあ。


心温まる趣向は宴席に出席した人々の心を和ませたようで良かった物の・・・一人、そうとは行かない人物が。そして初めて姿を現せた「あさひ太夫」。より正確に言えば顔は見えず、凛とした声色のみ。けれど、思っていたよりも遠すぎると現実を認識した澪。そして楼主に料理人にならないかと提案され・・・。揺れる澪の心境が目に見えてくるよう。


そして副題でもある「小夜しぐれ」。将来はそういう話の流れになるであろう事は予想が出来ていただけに、喜ぶべきか、悲しむべきか。前巻から源斉先生の体調不良から何かと思い、そして一話目から澪と源斉先生の姿がちらほら見られている事からくるこの婚礼話なのだろうけれど。


特に印象的なのがお芳さんの「想うひととは違うけれど、ご縁で結ばれた相手と手を携えて生きていく。美緒さんはその覚悟を決めはったんや」と、美緒の「あなたを嫌いになれれば良いのに。心から憎めれば良いのに」という言葉。


美緒の落ち着いた態度から腹を据えたのだと分かっても、気持ちを思えば切ない。けれど、結婚相手の爽助は美緒のことを好いているし、寄り添えばいい夫婦になれると思う。美緒は源斉先生を好いて、爽助は美緒を好き、渦中の源斉先生の心中は――――――。読み手であるからこそ分かる事だけれど、人の心の内だけは誰にも、どうすることが出来ないだけに、果たして澪の恋はどんな道を辿るのか。


そして、最後の「嘉祥(かじよう)」。前巻初めてその正体を明かした小松原(小野寺数馬)視点の番外編のような話。正体がより明確に記され、彼の視点から語られるからこそ見えてくるものが面白かった。さらに主役である澪が登場しないだけに、その思いは一入。澪のことを考えながら菓子を作る小松原の姿が新鮮で微笑ましい。少しずつ距離を縮めていく2人の姿に、より一層今後に期待がかかるところ。


今作は春満載。浅蜊の御神酒蒸し、葉の花尽くし、寿(ことほ)ぎ膳、ひとくち宝珠。どれもこれも美味しそうには変わりないのだけれど、今目に付くのはどうしても料理よりも目先に見え始めた物語の道行き。澪の恋も気になるけれど、澪自身が認められ初め、選択肢が増え始めただけに不安の影も見えてくる。今回で多くの伏線が見え、その分終盤にさしかかってきたような印象を受けた。果たして今後どうなっていくのか。円満に収まって欲しいと願いつつ、続きを待ちます。




【みをつくし料理帖シリーズ】その他の感想
第1作 「みをつくし料理帖 (1) 八朔の雪」
第2作 「みをつくし料理帖 (2) 花散らしの雨」
第3作 「みをつくし料理帖 (3) 想い雲」
第4作 「みをつくし料理帖 (4) 今朝の春」


[高田郁]その他感想
出世花



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時代小説「みをつくし料理帖シリーズ」、4作目。


月に三度の『三方よしの日』、つる屋では澪と助っ人の又次が作る料理が評判を呼び、繁盛していた。そんなある日、伊勢谷の美緒に大奥奉公の話が持ち上がり、澪は包丁使いの指南役を任されて――(第一話『花嫁御寮』)。戯作者清右衛門が吉原のあさひ太夫を題材に戯作を書くことになった。少しずつ明らかになってゆくあさひ太夫こと野江の過去とは――(第二話『友待つ雪』)。おりょうの旦那伊佐三に浮気の疑惑が!? つる屋の面々を巻き込んだことの真相とは――(第三話『寒紅』)。登龍楼(とりゅうろう)との料理の競い合いを行うこととなったつる屋。澪が生み出す渾身の料理は――(第四話『今朝の春』)。全四話を収録した大好評シリーズ第四弾!!


裏表紙より引用


待ちに待った新作・・・! が、さらに新作が出た後で読むという何とも微妙な感じに。というか、昨日本当に久々に本屋に行ってきました。去年の末から忙しすぎて全然本屋に行っていなかったので(4・5ヶ月ぶり?)、久々の本屋でいろんな本を探しつつ大興奮(笑)


こんなに新作が! 読みたい本が多すぎてお金がorz とりあえず一番読みたい本だけ買い漁ってきました。今までこんなに本を読まない&本屋に行かない日々はなかったので。+地震で色々と大変だったので行く機会を無くしていたので。本を読むのも本当に久しぶり。さーて、読むぞー! ちなみに今朝の春は大分前に買って置いたのですが、読むのが勿体なくて積んでいたのをようやく手を付けました。最新刊も買ってきましたしね!


今回は今までと少し講成が違う入り込み。初めの1遍は大抵料理関係で澪に難題が降り注いでいたのですが、今回、難題は難題でも「恋」の悩み。


巻末の帯にあるとおり小松原の正体が分かり、澪に襲いかかる現実。切ないやら苦しいやら切ないやら・・・初めから叶わない事は分かっている、けれど胸にせり上がってくる想い。この切ない感じが読んでいて堪らなくよかった。


そして最後、仕事が忙しく中々来ない小松原が朝から澪を慰めに来たシーンにはじんわり来ました。「指を大事にしろ」と思いかけず優しく声を掛けてくれた小松原と澪が心の中で反芻する恋の形。全体的に恋愛要素が今までよりも絡んだ話が多かったように思います。ラストに澪が自分の恋心とどう付き合っていくかを前向きに決めた姿が潔くて好きでした。今後の澪の恋模様がますます楽しみ。


そして、「友待つ雪」「寒紅」にはハラハラさせられました。野枝ちゃんの過去を知りたい、けれどそれを本にされたらと悩む澪と澪の想いに答えた蕪好き清右衛門。そして衝撃の一言。今後の展開が気になるところ。そして伊佐三の不倫疑惑と苦しむおりょうさんと太一ちゃん。伊佐三を行かせたくなくて身体に傷を作り、行かないでと主張する太一ちゃんの想いにぼろ泣き。最後の伊佐三の気持ちにさらにぼろ泣き。本当に良い家族だよ。良いところに丸く収まって良かった。


今巻も美味しそうな料理ばかり。ははきぎ飯に始まり、里の白雪、ひょっとこ温寿司、寒鰆の昆布締め。澪の恋の行方も気になるけれど、果たして次巻はどんな料理になるのやら3月発売だったので春料理かな。次巻も楽しみ!




【みをつくし料理帖シリーズ】その他の感想
第1作 「みをつくし料理帖 (1) 八朔の雪」
第2作 「みをつくし料理帖 (2) 花散らしの雨」
第3作 「みをつくし料理帖 (3) 想い雲」


[高田郁]その他感想
出世花



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影執事マルクシリーズ、第1巻。


ヴァレンシュタイ家の新米執事・マルクは優秀だった。柔和な笑顔にスマートな身のこなし。よく気がついて知識が豊富。「マルクさんって、何でもできるんですね! 体は弱いけど」素朴に感心する使用人たち。うら若き美貌の主・エルミナも無表情ながら満足のご様子。だが本人だけは不本意だった。私はなぜ「おいしい紅茶」なんて淹れてるんです!? 山犬の精霊“クフ・リーン”を使役する「影使い」の暗殺者が、なぜ!? ―なぜ? それは、強大な精霊に守られたエルミナに返り討ちにされたから。絶対服従を強いる「空白の契約書」にサインしたから・・・。風変わりな主と執事のコミカル・バトラー・ファンタジー。


裏表紙より引用


以前から気になっていた影執事マルクシリーズ。タイトルに惹かれて購入。ただ、異能力物だとは思っていなかったので序盤少し出鼻を挫かれたものの、コメディのようでしっかりとした世界観と設定が練り込んであったので最後まで楽しく読み込めた。


世界観は開拓期を少し過ぎた辺りの某国のような印象。それに異能力者の誓約が独特で面白い。展開も明るすぎず、暗すぎないので読みやすく、ほのぼのとした日常と戦闘シーンとのバランスも良い感じ。惜しむべきは序盤ルビが多めで読みにくいところかな。


異能者で暗殺者である主人公・マルクが依頼によりとある令嬢を暗殺しようと狙うが返り討ちに遭い、しかも契約させられ執事として令嬢に仕えさせられるハメに。しかも返り討ちにしたにも関わらず、令嬢自身は全く自覚無しな所が笑えます。


元々苦労人かつ器用貧乏なマルクが細々とした執事業務を的確にこなし、何だかんだ文句を脳内で爆発&つっこみする葛藤シーンには笑えました。けれどマルクにとって執事という職は天職みたいですね。しっくりはまり過ぎて笑えました。生真面目何だけど何処か抜けている辺りが彼の魅力かと。また、マルクとクフ・クーリンの掛け合いが笑えて楽しい。


また、令嬢ことエルミナは凛とした行動とは裏腹に時折見せる儚げな雰囲気と、神秘的な一面に彼女にどんな秘密が隠されているのかが気になるところ。他の登場人物達もどこか抜けていて面白い。


それと、戦闘シーンで少しばかり疾走感は落ちますが、合間合間にマルクと対した相手の今後が笑える。どうしてそうなった(笑) もう少しキレが欲しいような気もしますが、これはこれで好きです。


開拓民と先住民、精霊との契約者、そして屋敷の謎と様々な要素が絡み合いながら世界観が広がっていきそう。またイラストも綺麗で見応えがありました。続巻に期待。




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高田郁さんデビュー作。


「不義密通を犯した妻の血を引く娘に、なにとぞ善き名前を与えてくださらぬか」幼いお艶と共に妻敵討ちの旅に出て六年、江戸近郊で無念の死を遂げた矢萩源九郎が寺の住職に遺した言葉である。しかし、源九郎の骸と魂は三昧聖によって清められ、安らかに浄土へ旅立つ。「艶」から仏縁の「縁」と改名した少女が美しく成長する姿を、透明感溢れる筆致で描く感動の時代小説。


裏表紙より引用


みをつくし料理帖でお馴染み(?)の高田郁さんのデビュー作。みをつくし~の方がかなり好みの時代小説だったので、デビュー作も読んでみようと購入しました。


みをつくし~の前身だけあって、所々に高田さん節が見え隠れ。本当に、高田さんが書く物語は温かくも切なく、人情がある。今作も浸らせてもらいました。また、元は漫画原作者さんなんですね。


表題作「出世花」は「第2回小説NON短編時代小説賞奨励賞」を受賞した物で、その後続く連作は書き下ろし。印象としては表題作も好きですが、少し文章が硬いと感じ、2作目以降はすごく読みやすかっただけに納得。内容は人が亡くなった時に行う『湯灌(ゆかん)』。元々は漫画の取材のために行ったそうなのですが、そのネタを題材に持ってくる辺りがすごい。題材は重く悲しい物だけれど、関わる人達の温かさに最後は良い読後感。


主人公である「艶」から仏縁の「縁」と名を改め、生きていく姿に「みをつくし」の澪が重なる。特に親しい人達が「縁坊」と呼ぶので感慨も一入。縁も澪も真っ直ぐに己の信念を貫きながら生きていく姿が眩しい。当時、お寺の縁の様な人達は屍洗いと蔑まれていたけれど、縁が洗い清めていく姿は何か神聖なものを感じる。丁寧に心を尽くして身を清め、逝く人のみならず、送る側の人達ですら掬い上げる。この辺りの描写が本当に丁寧に精密に描かれていて読んでいてその情景が目に浮かぶようでした。


個人的に一番好きな話は「落合螢」と「見送り坂暮色」。縁の生い立ち、性格、またいる場所から恋話は入らないと思っていただけに「落合螢」は衝撃的でした。切なくも悲しい最後に胸が抉られるようでした。本当、岩吉さん、あなたって人はっ・・・・・・・! 「見送り坂暮色」では坊主である正念さんの生い立ちから物語として読みたくなりました。親子の情とはかくも切なく、温かいものなのか。本当にいい読了感でした。また、所々に入るミステリー要素にも楽しんで読み進めました。


やばいなあ、本当に高田さんはまったぞ。「銀二貫」の方もすでに文庫化しているので今度買いに行こう。




[高田郁]その他感想

【みをつくし料理帖シリーズ】その他の感想
第1作 「みをつくし料理帖 (1) 八朔の雪」
第2作 「みをつくし料理帖 (2) 花散らしの雨」
第3作 「みをつくし料理帖 (3) 想い雲」



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時代小説「みをつくし料理帖シリーズ」、3作目。


土用の入りが近づき、澪は暑気払いに出す料理の献立に頭を悩ませていた。そんなある日、戯作者・清右衛門が版元の坂村堂を連れ立って「つる家」を訪れる。澪の料理に感心した食道楽の坂村堂は、自らが雇い入れている上方料理人に是非この味を覚えさせたいと請う。翌日、さっそく現れた坂村堂の料理人はなんと、行方知れずとなっている、天満一兆庵の若旦那・佐兵衛と共に働いていた富三だったのだ。澪と芳は佐兵衛の行方を富三に聞くが、彼の口から語られたのは耳を 疑うような話だった――。書き下ろしで贈る、大好評「みをつくし料理帖」シリーズ、待望の第三弾。


裏表紙より引用


前巻同様、今巻も澪に多くの試練が降りかかる。ハデさはないものの、安定した文章に安心して読めました。澪は不器用ながらも真っ直ぐに乗り越えていく姿は小気味良い。作る料理も相変わらず美味しそう。既に過ぎてしまったけれど、土用の丑の日の「う」尽くし、ふっくら鱧の葛叩き、ふわり菊花雪、こんがり焼き柿。この名前の付け方も秀逸。また目に浮かぶような澪の手捌き、料理への想いに背筋が伸びる。


そして、1巻から謎だった江戸に店を構えた若旦那・佐兵衛の話。吉原による使い込みだと元奉公人・富三は語るけれど真実、この富三が店の金を使い込み店を傾けてしまったという。今若旦那はどんな気持ちでいるのか。生活は。生きているのか。様々な憶測が飛び交うものの生きていて欲しいという願うご寮さんの気持ちが切ない。そして富三最低だ。


ふっくら鱧の葛叩きではまさか吉原にて澪が料理をするとは思いも寄らぬ展開。もしかしたら、野江の口にはいるかも知れないと意気込むも吉原の主は女料理人というだけで蔑む。料理の味を確認した後の展開にはすっきりしたけれど。そして久々に再会する澪と野江。この出会い方のシーンには思わず涙。もう、この2人のエピソードの時は泣きっぱなしですが、それでも一瞬の邂逅には胸に沸き上がるものがある。


今回特に光ったのは澪の成長。背伸びせず店の身の丈にあった料理を考え、また料理人としての成長ぶりだけでなく、妹のようなふきの存在や小松原に恋し、悩み苦しみながらも女性としての成長し始める。今後の成長も楽しみ。良い案配に物事が動き始め、先が気になるところで終劇。次巻が楽しみ。




【みをつくし料理帖シリーズ】その他の感想
第1作 「みをつくし料理帖 (1) 八朔の雪」
第2作 「みをつくし料理帖 (2) 花散らしの雨」



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“本の姫”は謳うシリーズ、第2作。


病に倒れた母のため、一度は捨てたはずの故郷へ、七年ぶりに“姫”と帰るアンガス。記憶を失い、やがては死に至るという“忘れ病”は、母だけでなく、すで に町全体を蝕んでいた。初めて見る不吉な病に文字の気配を感じる二人だが―!? 一方、バニストンで彼の帰りを待つセラに、エイドリアンは語り始める。アンガスの過去を、そしてその背負う運命を…。シリーズ急展開!



裏表紙より引用


二つの物語を整理するために、初っ端から物語の内容を書いてます。感想はほぼ一番下。アンガスと「俺」の物語事にテーブルで囲い、色を変えてあります。


病に倒れた母のため、捨てたはずの故郷へと戻るアンガス。そして、セラへと語られるアンガスの過去。西部の町は天使還りと呼ばれるアンガスを忌み嫌い、幼い頃からずっと虐げられてきたアンガス。実の父・ダネルに殺されそうになり逃げた先でであるヘンリーと親友となるウォルター。雪山で姿を失い、戻った先で希望のスペルに触れ、目の前で命を絶った兄。

辛い過去だというのに故郷へ戻った先で再会する初恋の少女・ヘザー。そして、スペルが宿っていた人間の肝臓。真相を確かめようとしたフォンス村で出会うジミーとビット、そして空飛ぶ機械ジャイロ。スペルを回収し、事件を解決へと導いた物のむき出しの敵意にさらされながらもジョニーとアークのふたりがアンガスを救う。

故郷の人々とは和解できず、わだかまりは残った物の己の父親と少しは分かり合えたアンガスにほっと一息。


一方、楽園から身を投げた「俺」はラピス族に救われ「アザゼル」いう名をもらう。剽軽で道化の役割を担うクロウ。ラピス族の首長、ブラックホーク。クロウの姉であり戦士のペルグリン。無口だが情の厚いウォロック。そして、歌姫・リグレット。初めて人として扱われる日々。温かな言葉。受け入れなければ分からないという寛容な心にアザゼルの心は満たされ、次第にリグレットと互いに惹かれ会っていく。

クロウを救うために狼と精神波で会話し、英雄となり一族に認められ、一人前となったアザゼルの元へ懐かしいガブリエルが訪れる。しかしガブリエルは心縛され、その体には新しくツァドキエルとなったハイブリットだった。そしてアザゼルは強制的に楽園へと連れ戻されることになる。


ぶっちゃけ、ここまででかなり濃厚。これで一冊分くらいありそうだけれど、現実には未だ三分の二くらい。物語はまだ続く。


久々にバニストンへと戻ったアンガス一行は顔を出したエイドリアンの元でかつて死んだと思われていたウォルターが町で地図屋を営んでいることを知る。しかもウォルターはセラと婚約していて・・・。ウォルターと感動の再会を果たしたアンガスは歓喜の園への地図がスペルだと諭すが、ウォルターは歓喜の園へと行くと聞かず。かくして一行は歓喜の園へと向かうことになる。そこにはいつも通りのメンバーと共に同行するセラの姿が。久しぶりに再会したセラは美しい女性へと成長していた。

そして洞窟へと案内するベンを雇い、地図に記された歌の謎を解き、進んだ先には歓喜の園、聖域があった。そこで発覚する、ウォルターとベンが操られていた事実。しかも、操っていたのはかつて「アザゼル」を聖域へと連れ帰った天使、ツァドキエルだった。さらにセラは人質であり、かつてレッドに攫われたカブト族の歌姫・ホーリーウィングだということをアンガスは推測から導き出していた。ツァドキエルは姫に解放の歌を歌うことを強要する。

拒絶した姫にツァドキエルことウォルターはアンガスを拳銃で打ち抜く。その絶望にセラが声を取り戻したが都合が良いとツァドキエルが利用しようとする。そして、セラが絶体絶命のその時、ジョニーが追い求めていたレッドと攫われたはずのコル族の歌姫・ドーンコーラスが現れる。袂を分かったツァドキエルとレッド。そこで解放の歌を歌おうとするセラの元にジョニーと先程撃たれたはずのアンガスが現れ、その場を納めることに成功する。


一方、強制的に楽園へと戻されたアザゼルは下級天使達が暴動を起こし何人もの天使が命を落としたことを知る。さらにガブリエルはアザゼルの起こした事態を罪と考え「解放の歌」(リペルタカンツゥス)「鍵の歌」(クラヴィスカントゥス)を歌い続け人形とかしていた。そこでウリエルは選択を迫る。アンガスは「解放の歌」と「鍵の歌」を歌うことを決意する。

そして、体を行使して歌を歌い続けていたアザゼルはレミエルと自動人形となっていたミカエルに救われ、ジャイロに乗って一路大地を目指す。何とか大地へと降り立ったアザゼルはオルクス族のファングに命を救われる。彼から「大地の鍵」の祭りが行われるという話を聞き、アザゼルはオルクス族と共に会場へと足を伸ばす。ついた先でクロウやペルグリン、ウォロックなど懐かしいラピス族の面々と再会する。そして、会いたくて堪らなかった、リグレットとも――――――――。


故郷での過去と現実に対峙するアンガス。痛々しいけれど何度でも立ち上がる彼の姿にはほれぼれとします。アンガスの言っていることは理想論だけれど、彼の頑張りを見ていると努力が報われて欲しいとしみじみと感じます。最後の展開には度肝を抜かれ、無事だったと分かったときにはホッとしました。そして、ついに声を取り戻したセラ。あれ、彼女ってこんなキャラだったの?ってくらい喋り方が独特で驚きました。まあ、可愛いから良いんですが。


それと、「俺」ことアザゼルの物語の一気に面白くなってきた。恐らく、アザゼルは過去の人間なのだろうとは想像がつく物の果たしてどうなるのか。それにしても読めば読むほど姫=リグレットという気持ちが雁首をあげる。実際どうなんだろ? 最後にふたりは結ばれるのか?


一応、まとめてみた物の天使が何代目の誰なのかちょっと分かりづらいのが少し辛い。というか天使が誰が誰だか分からなくなる。横文字苦手。それにしても世界観がすごい。横だけでなく時間軸としての縦も厚い。ものすごいパワーを秘めた作家さんだと思う。二つの物語の終着点がますます楽しみ。




【“本の姫”は謳うシリーズ】その他の感想
第1作 「“本の姫”は謳う〈1〉」



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時代小説「みをつくし料理帖シリーズ」、2作目。


元飯田町に新しく暖簾を掲げた「つる屋」では、ふきという少女を下足番として雇い入れた。早くにふた親を亡くしたふきを、自らの境遇と重ね合わせ信頼を寄せていく澪。だが、丁度同じ頃、神田須田町の登龍楼で、澪の制作したはずの料理と全く同じ物が「つる屋」よりも先に供されているという。はじめは偶然とやり過ごすも、さらに考案した料理も先を越されてしまう。度重なる偶然に不安を感じた澪はある日、ふきの不審を行動を目撃してしまい――。書き下ろしで贈る、大好評「みをつくし料理帖」シリーズ第二弾!


裏表紙より引用


今回も、料理人「澪」の一途さ、健気さ、そして一所懸命な姿に思わず応援したくなりました。「雲外蒼天」にふさわしく、多くの災難や試練、意地悪な大料理店「登龍楼」の嫌がらせが襲いかかるも、俯くことなく立ち向かう澪の姿が眩しい。


料理へと真っ直ぐに立ち向かい創始工夫を施す美味しそうな料理の数々は食べたくて仕方がない。ほろにが蕗ご飯、こぼれ梅、なめらか葛饅頭、忍び瓜。特に忍び瓜野作り方には脱帽。まさかそんな食べ方があるとは! 是非今度作ってみたい。季節的にも旬の胡瓜は良い具合に化けてくれるに違いない。


前巻、卑劣な付け火によって失った店を場所を新たに心機一転。「つる屋」の名はそのままに新しい店で商売を始めた澪。新たに下足番の「ふき」を加えて料理に勤しむ。季節に見合った料理を出したというのに次の日に料理を出すという段階になって何故か登龍桜に料理流れるようになってしまう。それもふきが来てから。ふきの切なさや立場が分かっているからこそ辛く、そして澪の潔い態度が小気味良い。澪の優しさにじんわり。


そして、「こぼれ梅」のエピソードには思わず涙。幼馴染みの野江との友情。白いほっそりとした手が形作る『涙は来ん、来ん』。澪と野江の遣り取りが哀しいく切ない。涙封じのおまじないに言葉はなくとも多くの想いが溢れている。味醂の店主と留吉の話も良い案配。


2巻からはふきに加えて、戯作者・清右衛門、源斉先生に想いを寄せる美緒、助っ人・りうと加わり、物語に幅が広がり面白い。どのエピソードも多くの災難が降りかかっても、人の温かさに救われる「つる屋」。おりょうや太一が麻疹にかかったりと騒動が起こりますが、人情溢れるこの店の話をまだまだ読んでみたい。ほんのり澪の恋愛話も見えてきたところだし、続きが気になる。




【みをつくし料理帖シリーズ】その他の感想
第1作 「みをつくし料理帖 (1) 八朔の雪」



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のんびりなので更新は遅いと思いますが、ちまちま書いていこうと思います。よろしくお願いします。

【追記】かなり更新空いてすみません。体調不良と多忙でブログを書く気力がorz またぼちぼち書いていくのでよろしくお願いします。
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